CASE1 遺言書を作成したケース

CASE1 遺言書を作成したケース

2023.09.28解決事例
【相談内容】

相談者は、最近、がんの告知を受け、いつ亡くなるかもわからないとのことでした。いま住んでいる家は、相談者の実家であり、亡くなった父親の名義のままでした。相談者は、子どもがおらず、自分が亡くなった後は配偶者ではなく兄弟に承継させたいとの考えをお持ちでした。
【相談後のご状況】

相談者の亡父の相続持分を相談者の兄弟に相続させ、その他の財産は配偶者に相続させる内容の遺言を作成しました。遺言書の作成方法は、公正役場にいって作成するのは気が重く、自筆証書の方法だと紛失してしまったり、気付いてもらえない、ただ、いまは秘密にしておきたいなど相談者の方のニーズを踏まえ、平成30年に制度化された遺言書保管法に基づき、自筆証書を作成し、法務局に自筆証書遺言の保管をする方法を選択しました。
【先生からのコメント】
近時創設された遺言書保管制度は、手軽に作成できる自筆証書遺言を、法務局が形式面を審査した上で本人確認を経て保管してくれるものです。遺言者の死亡後に遺言書の真正や遺言内容をめぐって紛争を生じさせるリスク、遺言の存在に気付かれないまま遺産分割が行われるリスクを軽減できます。
また、遺言者が亡くなったあとの検認手続、すなわち自筆証書遺言の方式について要件を欠いていないか裁判所が調査確認する手続が法律上必要なのですが、遺言書保管制度を利用すると、法務局に保管の申請をする際に法務局職員が厳重に保管することから偽造、変造等のおそれがなくなり状態の保存が確実であるため検認が例外的に不要となります。検認手続は、遺言の保管者や遺言を発見した相続人が裁判所に遺言書を提出し、裁判所が法定相続人全員に検認期日・場所を通知して、相続人を集めて遺言書の状態を確認することになります。相続人間の関係が疎遠であったり、良好でない場合には、検認の手続も負担になる方もいらっしゃいますので、検認手続が不要というのもメリットだと思います。
遺言書保管制度を利用すると、遺言者の死亡時に指定する者に遺言書を保管している旨の通知をすることもできますし、遺言をされる方には便利な制度であり、今後はこの制度が浸透していくのではないでしょうか。